寒肥とは?やり方や時期を解説
日本では様々な場面で、冬の季節がやってくると昔からの慣わしで寒さを乗り越えるための対策をしていきます。
その1つに「寒肥」があります。
「かんごえ」「かんぴ」と読みますが、あまり聞いたことがない方も多いかもしれません。
寒肥は作物を育てるには大切なことです。
本記事では寒肥は何のためにいつおこなうのか、またやり方について詳しく解説します。
寒肥とは
日本は落葉樹が多く、庭木や果樹は冬になり気温が下がると葉を落とし休眠をし、生長を停止します。
その間、根は土壌中の水分や養分を吸収し、休眠から春に目覚めたときに元気に新芽が出るように準備をします。
その手助けをするために肥料を与えることが「寒肥」です。
寒肥の役割は以下になります。
・庭木や果樹の翌年の生長を促す
・根の発育を促す
・病害虫からの被害を防ぐ
冬の気温の低下は根の活動を鈍くさせます。
鈍くなればどうしても水分や養分の吸収が低下してしまうため、根が乾燥しやすくなるのです。
また寒冷地では根が凍結してしまうことがあり、凍結してしまうと細胞が破壊され根腐れを引き起こしてしまう可能性があります。
そうなると新たな新芽の成長に栄養が足りないことになってしまうため、冬に肥料をあげることが必要なのです。
冬の間に肥料を与えることで、根に水分や養分が吸収され、春には元気よく新芽が成長することが期待できます。
また、寒肥をおこなう際は以下の点に注意しておこないましょう。
・樹木の種類や大きさを考えて適切な量の肥料を施す
・穴を掘る際には根を傷つけないように十分に気を付ける
・肥料を施した後は土壌を固め適量の水を与える
寒肥の時期
寒肥の時期はその名の通り、寒い冬です。
気温の低下で根の活動が鈍くなり霜が降りる頃から土が凍結してしまう頃にかけて、根が乾燥したり根腐れしてしまわないよう肥料を与えます。
この時期は庭木や果樹の成長が止まっているため栄養が吸収されやすく、育てることを成功させるためには、この時期に肥料をやることが重要なポイントとまで言われています。
もし寒肥の時期が早すぎた場合、根がまだ休眠していないため、肥料の成分を根が過剰に吸収してしまい根腐れしてしまうのです。
また反対に遅すぎると根が活発に活動をしていないため、肥料を吸収しきれずあまり効果がでません。
寒肥は12~2月におこなう
寒肥の時期は冬になりますが、具体的には12月〜2月におこないます。
なぜならば、この時期が一番気温が下がり、根の活動が鈍くなることで肥料が根に吸収されやすくなるからです。
また、土壌は凍結しますが根が凍結する可能性は低いため、肥料が流れにくくなるというのも理由の1つです。
寒肥をこの時期にしっかりおこなうことで、春には新たな芽生えがあり元気に生長していくことができます。
12月:寒くなる前に土壌が凍結してしまわないよう肥料を施す
1月:寒さで根の活動が低下する前に肥料が根まで届くように施す
2月:春の訪れとともに根の活動が活発になる前に、肥料を根に届けるために施す
その年その年で寒さがくる時期にずれがあり、地域によっても異なるため、天気予報などで事前に寒気の到来時期を確認しておきましょう。
また積雪が多い地域の場合は、雪が降ってからだと雪の重みで肥料が流れてしまう可能性があるため、雪が降る前に肥料を施しましょう。
開花時期は避ける
冬に寒肥をしなかったからといって、開花時期に肥料を与えるということは避けてください。
開花時期というのは、庭木や果樹の活動が活発になる時期でもあります。
したがってその時期に肥料を与えると肥料の吸収も活発になり、花芽の分化を阻害したり、花芽の色づきを悪くしてしまったりと生長に悪影響を与えてしまいます。
肥料の過剰摂取の状態になってしまうのです。
何に対してもそうですがバランスが大事です。
開花時期に肥料を与えてしまうと、肥料が吸収され過ぎてしまうことで根腐れし、庭木や果樹がダメになってしまうということを覚えておきましょう。
寒肥のやり方
寒肥のやり方には大きく3つの方法があります。
①壺肥(つぼごえ)
②輪肥(りんぴ)
③車肥(くるまごえ)
それぞれにメリット、デメリットがあります。
また、根や樹木の幹や周りの植物を守りながら寒肥を施していく中で、庭木や果樹の種類や大きさ、施肥の目的によって使い分ける必要があります。
壺肥
壺肥とは庭木や果樹の根元に3〜6ヶ所に直径30cm程度、深さ20cm程度の穴を掘り、その穴に樹木の根が十分に張れる量の肥料を施す方法です。
穴を埋めた後には土を踏み固め水をやります。
根張りを良くし、安定した生長を促したい場合に使う方法になります。
壺肥のメリットは以下になります。
・肥料を直接根本に施すので効率よく肥料を吸収させることができる
・肥料が土壌に流れ出にくい
デメリットは以下になります。
・穴を掘るため作業に手間がかかる
・穴の深さや大きさで肥料の施す量が変わるため細かな調整が難しい
輪肥
輪肥とは、独立して植わっている1本の木の根元に円形に溝を掘って肥料を施す方法です。
樹木の根が養分を吸収しやすい樹冠の下周辺に溝を掘るため効果が高く、樹冠周辺の土壌改良にも効果があります。
葉や花を充実させ、美しい樹の形や花を咲かせたい場合はこの方法を使います。
輪肥のメリットは以下になります。
・根元から少し離れたところに円形に肥料をまくため、肥料の量を調整しやすい
・作業が比較的簡単なため初心者でも可能
デメリットは以下になります。
・肥料が土壌に流れ出やすい
車肥
車肥とは、大きい庭木や果樹の根元の周りに4~6箇所放射状に掘って肥料を施す方法です。
大きな樹木の根張りを良くし、病害虫に強く健康な樹を維持したい場合はこの方法を使います。
車肥のメリットは以下になります。
・肥料の量を調整しやすい
・作業が簡単なので初心者でもできる
デメリットは以下になります。
・肥料を根元の周りに施すため肥料が流れやすい
まとめ
寒肥は庭木や果樹にとって欠かすことのできない重要な作業です。
与える肥料には様々な種類があり、その中でも有機質肥料は天然の植物や動物から作られた肥料で、ゆっくりと効果がでるため寒肥にふさわしい肥料です。
「寒肥」と書かれているものを購入するのが一番わかりやすいですが、書かれていなくても有機質肥料であれば問題ありません。
ただし、油かすだけ骨粉だけといったように、配合されていないものは栄養に偏りでてしまうため避けたほうがよいでしょう。
寒肥を適切な時期に適切な量で施し、春からの1年、元気に庭木や果樹が成長していけるようにしていきましょう。
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